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日本語そのものをドメイン名にできます
ここまでの連載では、example.com、example.jp、example.shopのように、主に英数字で書かれたドメインを見てきました。しかしドメイン名は、必ずしも英数字だけで作る必要はありません。
例えば、
- 温泉.jp
- 東京寿司.jp
- 日本のお菓子.jp
のように、日本語そのものをドメイン名にすることもできます。

- 1 日本語そのものをドメイン名にできます
- 2 「何のサイトなのか」が一瞬で伝わります
- 3 会社名や商品名をそのまま使える場合もあります
- 4 日本語なら短く見えることもあります
- 5 ではSEOでも日本語ドメインの方が有利なのでしょうか
- 6 一番大きな問題は「入力するとき」です
- 7 漢字には「どう書くのか」という問題があります
- 8 すべての日本語を自由に使えるわけではありません
- 9 CO.JPを日本語にすることはできません
- 10 英数字ドメインと日本語ドメインを両方持つ方法もあります
- 11 メールアドレスでは少し慎重に考えた方がよいでしょう
- 12 コピーしたら「xn--」になっていることがあります
- 13 日本語ドメインだから安全、というわけでもありません
- 14 実際、日本語JPドメインはどのくらい使われているのでしょうか
- 15 日本語ドメインが向いている場面、向いていない場面
- 16 日本語に見えているのに、裏側では日本語ではない
JPRSでは、汎用JPドメイン名と都道府県型JPドメイン名で日本語ドメイン名を提供しています。漢字、ひらがな、カタカナなどを利用でき、日本語部分は1文字以上15文字以下です。
見た瞬間に意味が分かるという点では、英数字ドメインにはない強さがあります。
「何のサイトなのか」が一瞬で伝わります
日本語ドメインの一番分かりやすいメリットは、文字通り日本語で読めることです。
例えば、英語やローマ字で「tokyo-tsukudani.jp」と書かれている場合、日本人ならある程度意味を推測できます。
しかし、
東京佃煮.jp
なら、説明はほとんど必要ありません。
商品名、店名、地域名、サービス名などをそのままドメインにできれば、URLそのものが小さな看板のようになります。新聞広告、ポスター、チラシ、テレビCM、看板など、URLを「読む」場面では特に相性がよいでしょう。
ここには第5回で見た新gTLDと少し似たところがあります。flower.shopなら、左側と右側を合わせて意味を作れました。日本語ドメインでは、さらに直接的に意味を書けます。「何をしているサイトなのか」という説明を、ドメイン名自体に持たせることができるわけです。
会社名や商品名をそのまま使える場合もあります
もう一つのメリットは、日本語の名称を無理にローマ字へ変換しなくてもよいことです。
例えば「山田製菓」という会社があったとします。英数字ドメインにするなら、
- yamadaseika.jp
- yamada-seika.jp
- yamada-confectionery.jp
など、何らかの表記を考える必要があります。
しかし日本語ドメインなら「山田製菓.jp」という選択肢があります。
漢字の企業名やブランド名をそのまま表現できるため、名称とURLのズレを小さくできるわけです。特に、日本国内だけを対象にした店舗、観光施設、地域サービス、商品キャンペーンなどでは、かなり分かりやすい名前を作れる可能性があります。
日本語なら短く見えることもあります
同じ意味を表す場合でも、日本語は英字より短く見えることがあります。
例えば、
traditional-japanese-sweets.jp
と、
和菓子.jp
では、見た目の印象はかなり違います。
もちろん、この二つが同じブランド名というわけではありません。ただ、漢字は一文字に多くの意味を持たせられるため、日本人にとっては少ない文字数で内容を伝えやすいという特徴があります。「見たときの短さ」という意味では、日本語ドメインはかなり強力です。
ではSEOでも日本語ドメインの方が有利なのでしょうか
ここで、第5回と同じ疑問が出てきます。例えば「東京温泉.jp」というドメインを取得すれば、「東京 温泉」という検索で有利になるのでしょうか。
Googleは、URLにローカライズされた単語や国際化ドメイン名(IDN)を使用してよいと説明しています。つまり、日本語ドメインだからGoogleが正常に扱えないということはありません。しかし、これは「検索したいキーワードを日本語ドメインに入れれば順位が上がる」という意味ではありません。前回までにも見たように、ドメイン名にキーワードが含まれていることだけで検索順位が決まるわけではありません。
東京温泉.jpだから自動的に「東京 温泉」で上位になるわけでも、日本語ドメインだから不利になるわけでもない。基本的には、サイトの内容、品質、リンク、利用者にとっての有用性など、サイト全体を見る必要があります。
補足:日本語URLをGoogleは扱えるのでしょうか
Googleは、URLにローカライズされた単語を使用したり、国際化ドメイン名(IDN)を利用したりしてよいと明記しています。日本語ドメインだからクロールやインデックスができない、という仕組みではありません。
ただし、SEO目的だけで日本語キーワードをドメインへ詰め込む必要もありません。
一番大きな問題は「入力するとき」です
ここまでは、日本語ドメインがかなり便利に見えます。では、なぜそれほど一般的になっていないのでしょう。
一つの理由は、見ることと入力することが違うからです。例えば「温泉.jp」は、見ればすぐ分かります。キーボードで入力する場合には、日本語入力へ切り替え、「おんせん」と打ち、「温泉」に変換し、その後に「.jp」を入力する必要があります。
スマートフォンならそれほど難しくないかもしれません。ただ、英数字ドメインならIMEの切り替えなしで入力できます。海外の端末や日本語入力環境のないPCでは、さらに面倒になります。つまり日本語ドメインは「読める人には非常に分かりやすい」一方で、「入力環境まで含めると必ずしも簡単ではない」のです。
漢字には「どう書くのか」という問題があります
口頭で伝える場合も考えてみましょう。
「この会社ののWebサイトはね、斎籐製菓.jpって漢字で書くんだ」
しかし初めて聞いた人は、???
「サイトウはどのサイトウですか?簡単な斉藤ですか?それとも齊藤ですか?」
二番目の齊藤は言葉で表現するのでも難しいかもしれません。
英数字ドメインにはスペルを説明する面倒がありますが、日本語ドメインには漢字を説明する面倒があります。そしてケース次第で漢字の方がやっかいです。
つまり「日本語なら絶対に伝えやすい」というわけではありません。どちらが分かりやすいかは、名前そのものによります。
日本語には、さらに他の問題もあります。ひらがなとカタカナ、漢字とかな、長音の有無などもあります。見れば分かる日本語ドメインでも、音だけでは必ずしも一意に決まらないのです。
すべての日本語を自由に使えるわけではありません
「日本語が使える」といっても、何でも入力できるわけではありません。
汎用JPドメインでは、全角ひらがな、カタカナ、漢字のほか、一定の記号などが利用できます。ただし「☆」「!」「、」「。」など、登録できない記号もあります。日本語部分は1文字以上15文字以下です。
英数字だけなら3文字以上必要ですが、日本語を含むドメインなら1文字から登録できます。これは利点かもしれません。
漢字一文字でも十分な意味を持つ日本語の性質が、登録ルールにも表れているわけです。
CO.JPを日本語にすることはできません
ここは以前の回とのつながりで、少し注意が必要です。日本語JPドメイン名を利用できるのは、主に汎用JPドメイン名と都道府県型JPドメイン名です。CO.JP、OR.JP、AC.JP、GO.JPなどの属性型JPドメイン名では、日本語ドメイン名を登録できません。
ですから、
山田製菓.co.jp
という形にはできません。
企業が日本語名を使いたい場合には「山田製菓.jp」のような汎用JPドメインを別途登録する、といった方法を考えることになります。
英数字ドメインと日本語ドメインを両方持つ方法もあります
ここまで見ると、一つの使い方が見えてきます。
会社の基本ドメインは、
yamadaseika.co.jp
にする。
そして広告やキャンペーン向けに、
山田製菓.jp
も取得する。
日本語ドメインへアクセスした人を、メインサイトへ転送することもできます。こうすれば、メールや社内システムでは扱いやすい英数字ドメインを使いながら、広告では分かりやすい日本語ドメインを使うという役割分担ができます。
日本語ドメインを「会社の唯一のドメインにするか」という二択ではなく、「別名として活用する」という考え方もあるわけです。
メールアドレスでは少し慎重に考えた方がよいでしょう
Webサイト以上に注意したいのがメールです。
JPRSも、日本語ドメインをホームページアドレスなどで利用できるかどうかは、取扱事業者のサービス内容やソフトウェアの対応状況によって異なると案内しています。
メールアドレスの場合は、さらにメールサービス、入力フォーム、顧客管理システムなど複数の仕組みを通ります。そのため、会社の主要なメールアドレスに日本語ドメインを採用する場合には、実際に利用するサービスや取引先のシステムで正常に扱えるかを確認した方がよいでしょう。
日本語ドメインが技術的に存在できることと、すべてのシステムで問題なく受け入れられることは別です。
ここは第5回で見たUniversal Acceptanceの問題ともつながっています。
コピーしたら「xn--」になっていることがあります
日本語ドメインを使っていると、少し不思議な文字列に出会うことがあります。
ブラウザーでは、
ドメイン名例.jp
と表示されていたのに、あるシステムへコピーすると、
XN–ECKWD4C7CU47R2WF.JP
のような文字列になることがあります。JPRSもこの二つを同じドメイン名の例として案内しています。初めて見ると、まったく別のサイトに変換されたように感じるかもしれません。しかし、これは日本語を従来のDNSでも扱えるように変換した表現です。
なぜこんな変換が必要なのでしょう。
この仕組みがPunycodeです。
詳しくは次回扱いますが、日本語ドメインを使うなら「見えている日本語とは別の表記が存在する」ということだけは知っておいた方がよいでしょう。
日本語ドメインだから安全、というわけでもありません
日本語で企業名や商品名が書かれていると、それだけで公式サイトらしく感じることがあります。しかし、ドメイン名が日本語であること自体は、サイト運営者の身元や安全性を保証するものではありません。
希望する文字列が登録可能であっても、他人の企業名、商品名、サービス名などを不正に利用すれば、権利侵害やドメイン名紛争の問題になる可能性があります。JPRSも登録時に他者の権利を侵害しないよう注意を呼びかけています。
さらに、似ている文字を使って別のドメインに見せる問題もあります。この話は日本語だけではなく、世界中の国際化ドメイン名に関係します。文字が似ていることを利用した攻撃については、第9回で詳しく見ていきます。
実際、日本語JPドメインはどのくらい使われているのでしょうか
JPRSの統計では、2026年9月1日時点で汎用JPドメイン名は約130万件登録されており、そのうち日本語JPドメイン名は79,253件です。英数字の汎用JPドメイン名は約122万件なので、日本語ドメインは存在感はあるものの、主流は依然として英数字だと分かります。
これは日本語ドメインが使えないからではありません。分かりやすさというメリットがある一方で、入力、メール、海外利用、システム対応などを考えると、英数字ドメインの方が幅広い用途で無難だからだと考えられます。逆にいえば、日本語ドメインは「英数字ドメインを置き換えるもの」というより、用途が合えば非常に強い道具と考えた方が分かりやすいでしょう。
日本語ドメインが向いている場面、向いていない場面
日本語ドメインが向いているのは、日本国内の一般消費者を対象にしていて、日本語の名称そのものに価値がある場合です。例えば店舗、地域サービス、観光地、商品キャンペーン、イベントなどでは、「見た瞬間に意味が分かる」というメリットを活かしやすいでしょう。
一方、海外ユーザーが多いサービス、メールアドレスを頻繁に口頭で伝える会社、さまざまな外部システムとの連携が必要な業務では、英数字ドメインの方が扱いやすい場合があります。つまり、日本語ドメインが優れているか、英数字ドメインが優れているかという話ではありません。
第5回で新gTLDを見たときと同じです。誰に、どの場面で、どのように名前を伝えるのか。そこから逆算して選ぶ必要があります。
日本語に見えているのに、裏側では日本語ではない
ここまで日本語ドメインのメリットとデメリットを見てきました。
日本語で読める。
覚えやすい。
意味も伝わりやすい。
しかし入力やシステム対応では、英数字より扱いにくい場合があります。そして、この違いの根底には一つの技術があります。
Punycodeです。
日本語ドメインをブラウザーに入力したとき、DNSの世界では何が起きているのでしょう。
なぜ「日本語.jp」が突然「xn--……」という見慣れない文字列になるのでしょう。
第8回では、日本語ドメインの裏側にあるIDNとPunycodeの仕組みを見ていきます。