超知能AI論争を読む

超知能AI論争を読む:最終回-シンギュラリティにあとどれくらい?

AIの進歩は指数関数的である

 このことはよく言われるし、昨今のAIを見ていれば納得できる。
 もちろん、ここで止まることだってありうるが、あまりそうは見えない。
 指数関数的というのは急激な進化みたいなことが起こるので、その中で今どのくらいの位置にいるのかが重要になると思う。
 と考えて、これまでの流れの中で、超知能AI=シンギュラリティという大雑把な設定で、AI三つにそれぞれ訊いてみた。この場合の超知能AIはASIであり、AGIではないという認識である。

 まず最初の質問は指数関数的な進歩が解りやすいように
「時速1kmで走り始めた乗り物Aが、1分ごとに倍に加速される。何分で新幹線を抜くのか?」という質問をした。回答は当然のことながら、新幹線を時速300kmとしてAが時速300kmを超えるのは9分後だった。1,2,4,16,32,64,128,256,512というメモリの増加と同じような数値の上昇で、8分後はまだ256kmだが、次の1分で512kmとぶっちぎる。次の1分で1024kmだ。つまりここで飛行機を越え、音速に近づくのだ。

 なのでこの10分を“シンギュラリティ”と仮定したとき、今現在は何分なのか?という質問をしてみた。

今はシンギュラリティまでの道程のどの辺りなのか

ChatGPT, Claude, Geminiそれぞれに訊いた結果が以下だ。

ChatGPTの見立て

比喩上の時間 速度 現実の目安 AIの段階・意味
0分 時速1km 1956年・ダートマス会議 AIという研究分野が始まる。まだ社会全体から見れば、ほとんど動いていないように見える段階。
1分 時速2km 1960〜1980年代 記号処理AI、エキスパートシステム、初期ニューラルネットの時代。研究としては重要だが、一般社会への影響は限定的。
2分 時速4km 1990年代〜2000年代 検索、推薦、統計的機械学習が実用化される。AIはサービスの裏側で使われるが、多くの人はAIとして意識していない。
3分 時速8km 2012年前後 AlexNet以後、深層学習が本格化する。画像認識などでAIの性能が大きく伸び、研究者や技術者の間で空気が変わり始める。
4分 時速16km 2016〜2017年頃 AlphaGoやTransformerの登場により、AIが特定分野で人間を超えたり、言語処理の基盤が大きく変わったりする。
5分 時速32km 2020〜2022年 GPT-3、画像生成AI、コード生成AIなどが登場し、生成AIの実用性が見え始める。まだ一部の人が使う新しい道具という段階。
6分 時速64km 2022年末〜2023年 ChatGPTの登場によって、一般の人がAIの変化を直接体験する。文章作成、要約、翻訳、相談、コード補助などが日常的に使われ始める。
7分 時速128km 2023〜2024年 GPT-4級のAI、Claude、Geminiなどが登場し、AIは単なる遊び道具ではなく、仕事の補助ツールとして本格的に使われ始める。
8分 時速256km 2024〜2026年 マルチモーダル化、推論モデル、コーディング支援、業務支援が進み、AIは「答える道具」から「作業を進める道具」へ移り始める。
8分20秒前後
現在地
時速約320km前後 2026年現在 AIは会話や文章作成だけでなく、調査、構成案作成、プログラミング、資料作成、画像生成、複数手順の作業補助へ広がっている。まだ完全に自律して仕事を任せられる段階ではないが、人間の作業工程の一部をかなり具体的に代替し始めている。
9分 時速512km 近未来 AIを使う組織と使わない組織の差が決定的になる。個人の能力差というより、AIを前提に仕事を設計できるかどうかが競争力を左右する。
10分 時速1024km シンギュラリティ 人間がAIの進化の先を十分に予測できなくなる段階。AIの変化が速すぎて、社会制度、教育、雇用、倫理、法律が常に後追いになる。

Claudeの見立て

速度 対応する出来事・状態
1分
2 km/h

パーセプトロン、初期ニューラルネット

1950〜80年代 /「計算機が学習する」という概念の萌芽。ほぼ誰にも見えていない
2分
4 km/h

バックプロパゲーションの普及、エキスパートシステム

1980〜90年代 / AI冬の時代も含む。自転車程度の速度感
3分
8 km/h

SVMと統計的機械学習、初期の音声認識

2000年代 /「使えるかもしれない」という気配
4分
16 km/h

DeepLearning勃興、ImageNet革命

2012年前後 / 原付程度。研究者は興奮しているが、社会は静か
5分
32 km/h

AlphaGo、初期GPT、BERT

2016〜2019年 / 自動車の速度。「AIが人間を超えた」という最初の実感
6分
64 km/h

GPT-3、Stable Diffusion、Codex

2020〜2022年 / 一般道を走る車。「使える」ものが一般人の手に届き始める
7分
128 km/h

ChatGPT登場、GPT-4、Claude 2〜3

2022〜2024年 / 高速道路。社会が騒ぎ始め、規制の議論が始まる
7分30秒 NOW
〜180 km/h

エージェント化の初期、マルチモーダル統合、推論モデル

2025年 / 速度計は読めるが、カーブの先が見えない
8分
256 km/h

エージェントが業務単位を自律完結。ホワイトカラーの一次処理がAIに移行

制度が追いつかず社会摩擦が激化
9分
512 km/h

AIがAIを評価・改善するループが本格化。人間の監督が形骸化し始める

新幹線——でも線路はまだ人間が敷いている
9分30秒
〜700 km/h

人間の認知速度と進化速度の乖離が誰の目にも明らか

「何が起きているか」を理解できる人間が急減する
10分
1024 km/h

——見えない。音速に近い。景色が消える。

シンギュラリティ

Geminiの見立て

時間 速度の比喩 進化のフェーズ 具体的なプロセスと特徴
1分目 時速1km(歩行スピード) ルールベース時代 人間がすべてのルールを書き込む。チェスなど、特定の狭いタスクでのみ機能する段階。
2分目 時速2km(早歩き) ディープラーニングの夜明け 深層学習の本格化。AIが大量のデータから「自ら特徴を見つける」ことができるようになり始めた段階。
3分目 時速4km(ジョギング) Transformer理論の誕生 現在の生成AIの基盤となる革新的なアーキテクチャが発表。乗り物に超高性能な「基本エンジン」が搭載される。
4分目 時速8km(自転車のんびり) 初期LLMの登場 大量のテキストを学習し「それらしい文章」を生成可能に。世間からはまだ高度な「自動作文ツール」と見なされていた。
5分目 時速16km(自転車全力疾走) ChatGPTの衝撃 「チャット」形式でAIが一般社会に解放。文脈の理解と自然な対話能力に、世界が「パラダイムシフト」を予感し始める。
6分目 時速32km(原付バイク) マルチモーダル化 テキスト、画像、音声、動画、コードをシームレスに統合。クリエイティブや開発現場で実用的な「相棒」となる。
7分目 時速64km(自動車の法定速度) 推論能力とエージェント化 【★現在地:7分30秒〜45秒】 論理的に考えてタスクを自律実行。知識の提示から「行動の実行」へ。現在、開発速度と社会制度のタイムラグによる摩擦が最大化。
8分目 時速128km(高速道路の違反速度) 組織型マルチエージェント&物理世界との融合 複数のAIエージェントがチームを組み、人間の指示一つでプロジェクトを完遂。ロボティクス融合で物理空間の自動化も本格化。
9分目 時速256〜512km(新幹線超え) 「自己改善の自動化」開始 AI自身が「次世代AIのコード」を書き、学習し、最適化するループが始動。人間の知覚スピードを完全に置き去りにし、数日単位で能力が爆発。
10分目 時速1,024km(音速・シンギュラリティ) AGI・ASI(超知能)の誕生 全人類の知性を合わせたよりも賢い「超知能」へ。進化の舵取りは完全に人間の手を離れ、予測不可能な「未知の領域」に突入。

指数関数的な発展とシンギュラリティー

 表を見ると解るように、ChatGPTとClaudeは20世紀半ばのAIの本当に初期の頃から始まっているが、Geminiはもう少し後から始まっている。
 その上で、例えばChatGPTであれば、現在を8分20秒に置いているが、これは恐らく最初に訊いた比喩、いつ新幹線を抜くかのおよそ300km/時に引っ張られているところがあるようには思える。ただ、倍倍で進むこの未来このやり方で敷衍するなら、近未来と書いてあるところは2027~2028年だし、シンギュラリティは2029~2030年ということになる。但しその2年、2年に間に、これまでの進歩の倍倍がその期間に起こるということだ。

 GPT-4からGPT-5.5への変化を、仮に「1.5世代分の進化」と考えてみる。普通の感覚なら、その次はGPT-6、あるいはGPT-7くらいを想像するかもしれない。しかし、もし進化の幅そのものが倍々に広がっていくのだとすれば、次の同じ期間に起こるのは「+1.5」ではなく「+3」の進化である。つまり、GPT-5.5の次は、感覚的にはGPT-8.5相当まで跳ぶことになる。さらにその次の期間では、進化幅は「+6」になる。そうなると、GPT-8.5相当からGPT-14.5相当へ一気に進むようなものだ。
 もちろん、実際にそのような名称のモデルが登場するという意味ではない。これはあくまで、指数関数的な進化を直感的に理解するためのたとえである。3.5と5.5の性能の差を考えたとき、14.5というバージョンが示す性能は、およそ予測できない。これがきっとシンギュラリティである。

 ClaudeとGeminiは現在地を7分半くらい、つまりまだ新幹線には到達していませんよ。シンギュラリティまでは2分半あります。といっているとも取れる。
 まあ、これはお遊びみたいなものなので、細かく彫る意味はたいしてないが、問題はシンギュラリティと呼ばれる、予測不能な地点は、すぐそこですよとAIは考えているということだ。いや、AIはそんなこと考えていないだろうというのも一つの意見ではあるが、昨今のAI界隈の研究者というか実際作っている人たちも、そう考えている人が多い。

では世界は大丈夫?

 ではもうすぐそこにシンギュラリティなり超知能が迫ってきているとして、世界は大丈夫なのかという問題である。セーブルは知らないうちに世界中に広がって行った。
 まだそこまでできるわけではないが、AI2027でも似たような感じで中国のAIとも謀って、やがて人類に牙を剝く。
 AI2027のAgent-3とか4とかいういわばエージェントとしてのAIは実際にあのレポートで語られているような形で進んでいるように、一見見えることがある。
 これらの予測は予測でしかないが、「わぁ、当たっている!」といっているうちに、取り返しの付かないことになっている可能性はゼロではない。
 ぼくはかなりこういう点ではオプティミストなので、そんな未来は信じていない。
 戦争なんかやってる場合じゃないよ人類。なのかもしれないし、それは対AIで戦うという事ではなく、以下にAIを人類の未来にとって明るい技術として進化させていく必要があるかということで、人類のリソースをそっちに全振りしていけば、きっと明るい未来が来るに違いない。

 

 そう思うのです。

 

 超知能AI論争を読む-シリーズはこれで終わりです。
お読み頂いた方、ありがとうございます。

 

2026年5月25日 2:14 AM   投稿者: M.A.   カテゴリー: AGI / ASI, AI, ChatGPT, Claude, Gemini, エージェントAI, シンギュラリティ

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