自動運転は、いま何ができるのか――米国・中国・日本の現在地【自動運転を考える 第1回】
このところぼくのXタイムラインに自動運転のポストがよく現れる。半分はライドシェアとその延長線上にある自動運転みたいな交雑した内容もあるが、昨今のテスラのCyberCabなどを見ると、本格的な自動運転が近づいているという印象を受ける反面、いやいや、そこにはまだ越えなくてはいけないハードルがたくさんあるだろう。だからあらゆるところでそれが可能なわけではないのだ、などの反論があるように見える。
そこで、今回現状をチャッピーに調べてもらい、2026年の9月時点で見える自動運転について、自分なりの考察をしてみた。
ぼく自身は、どちらかといえば楽観的な側にいる。AIの進歩を見ていると、いま難しいとされる問題も、思ったより早く解決するのではないかと感じる。ただ、その期待を確かめるためにも、まず現在地を知りたい。
この連載では、誰かの投稿への反論ではなく、実際に何ができていて、何が未解決なのかを調べていく。第1回は、その見取り図である。
※情報の確認基準日は2026年9月10日。企業が発表した実績はその旨を記し、将来計画や試験運行と区別した。

ライドシェアと自動運転は、違う問いへの答えである
最初に、タイムラインで混ざりがちな話を整理しておきたい。
ライドシェアやアプリによる配車の議論は、誰が、どのような仕組みで移動サービスを提供するかという話である。一方、自動運転の議論は、車を動かし、周囲を確認し、危険に対応する仕事を、人間とシステムがどう分担するかという話だ。
両者は組み合わせられる。配車アプリで人間の運転する車を呼ぶことも、自動運転の車を呼ぶこともできる。しかし、アプリで車を呼べるようになったからといって、運転手が不要になるわけではない。
「日本でもライドシェアを広げるべきだ」と「日本でも無人タクシーを広げられるはずだ」は、それぞれ検討する必要がある。
自動運転のレベルは、運転の上手さの点数ではない
レベル2、レベル4という言葉を聞くと、同じ能力テストの点数のように感じるかもしれない。だが、重要なのは、人間にどの役割が残るかという違いである。
| レベル | システムと人間の役割 |
|---|---|
| 0 | 基本的に人間が運転する。警告や緊急時の一時的な支援があっても、この分類になりうる |
| 1 | ハンドル操作、または加減速の一方を継続的に支援する。周囲の監視は人間が行う |
| 2 | ハンドル操作と加減速の両方を支援する。人間は引き続き周囲を監視し、必要な対応を行う |
| 3 | 定められた条件でシステムが運転する。引き継ぎを求められたら人間が対応する |
| 4 | 定められた条件で、人間の運転対応を前提にせずシステムが運転する |
| 5 | 人間が運転できる道路・環境条件全般で、システムが運転を担う |
分類の基本は、NHTSAの自動運転レベル解説を参照した。
ここで押さえたいのは、手を離せることと、注意を向けなくてよいことは違う、という点だ。操作の多くを車が行っていても、人間による常時監視が前提なら、その人は乗客になったわけではない。
また、レベル5も、冠水して物理的に通れない道路を走破する能力という意味ではない。人間にも走れない状況まで克服する万能車を指しているのではない。
米国では、乗客だけで移動するサービスが存在する
Waymoは2026年9月1日、デンバー、サンディエゴ、タンパで一般利用者の受け入れを開始し、完全自動運転の乗車を提供する都市が14になったと発表した。ただし、新たな3都市は利用者を段階的に受け入れる形であり、14都市すべての全域で誰でもすぐ利用できるという意味ではない。Waymoの発表
この事実は、二つの方向から読む必要がある。
一つは、人間が運転席にいなくても移動できるサービスが、すでに利用者を乗せて動いているということ。もう一つは、利用できる地域や条件が残っているということだ。
限定されているから価値がない、とぼくは思わない。仮に自宅と病院、駅、買い物先を結べるなら、その範囲だけでも助かる人はいるだろう。一方、その実績から、初めて訪れた町でも同じように走れると判断することはできない。
「使える範囲での価値」と「その範囲を広げる難しさ」は、両方見ていきたい。
テスラは、市販車の運転支援とRobotaxiを分けて見る
テスラについては、同じ会社の話でも、何を指しているかで現在地が違う。
市販車向けのFSD(Supervised)について、テスラは運転者の積極的な監視が必要で、車を自律走行車にするものではないと説明している。名称に「Full Self-Driving」とあっても、人間の運転役割を置き換える製品として説明されているわけではない。利用可能な機能も地域や車両、ソフトウェアなどで異なる。テスラのFSD説明
一方、同社のRobotaxiサービスには、ハンドルを持たない2人乗りのCybercabが加わっている。2026年9月10日に確認した公式案内では、Cybercabの乗車はテキサス州オースティンの限定地域で利用可能とされている。テスラのCybercab案内
この二つを一括りにすると、市販車でできることを大きく見積もったり、逆に別の運行サービスで起きている進展を見落としたりする。
なお、9月4日には、Cybercabの連邦安全基準への自己認証をめぐり、米当局が調査を開始したと報じられた。調査開始は違反確定を意味しないが、走行技術と車両の制度上の扱いが別の論点であることは分かる。Reutersの報道
ぼくが気になるのは、この先だ。AIがさまざまな道路環境に対応できるようになれば、地域の制限は急速に小さくなるのか。その可能性を考えるためにも、いま提供されている機能と、今後実現したい能力を分けておく必要がある。
中国も、現在地を考える上で欠かせない
中国の動きを入れると、自動運転の話はWaymoとテスラの比較だけでは収まらなくなる。
例えばPony.aiは、2025年10月に深圳で市全域を対象とする無人の商用Robotaxi運行許可を得たと報じられた。ただし、報道時点のサービスは南山、前海、宝安から始め、順次広げる計画だった。許可の対象が市全域であることと、利用者がすでに市内のどこへでも行けることは違う。Reutersの報道
中国企業BaiduのApollo Goも、実績を積み重ねている。2026年8月18日の決算発表では、世界の展開先が28都市に達し、完全無人の累計自動運転距離が2億4,000万kmを超えたと説明している。ただし、この28都市には試験段階の拠点も含まれる。28都市すべてで無人の有料サービスが営業中という数字ではない。距離も同社が公表した未監査の運用データである。Baiduの2026年第2四半期決算資料
中国を見る意味は、「米国より進んでいるか」という順位付けだけではない。条件を定めたサービスを多数展開することで、レベル5の完成を待たずに移動の仕組みが変わる可能性を考えられるからだ。
もちろん、距離や都市数だけでは、安全性も採算も結論は出ない。ここでも、数字が何を数えているかが重要になる。
Wayveのニュースも、人間の役割を読む
英国のWayveは、2026年9月3日にUberとロンドンで乗車サービスを始めたと発表した。発表には「autonomous」という言葉が使われているが、開始段階は訓練を受けた運転者が同乗して監督するサービスである。Wayveの発表
これは研究成果を一般利用へつなげる前進として見ることができる。ただし、運転者を置かないサービスとは分けて読む必要がある。
将来目指す方式の可能性と、現在のサービスで人間に任せている役割は、別々に確認したい。Wayveの技術的な特徴は、次回詳しく扱う。
日本にもレベル4はある。ただ、利用の姿が違う
日本には自動運転が存在しない、という理解も正確ではない。
レベル4に相当する「特定自動運行」の許可制度は、2023年4月に施行された。運転者がいない状態での自動運転を認める枠組みは、すでにある。警察庁の説明
具体例が福井県永平寺町だ。国のプロジェクトによる事例紹介では、2023年5月21日にレベル4のサービスを開始したとされる。2025年5月更新の同資料では、レベル4区間は約2kmで、走行空間は自転車歩行者専用道と説明されている。これは先行事例の説明であり、2026年9月当日の運行予定を示すものではない。RoAD to the L4の永平寺町事例
都市の複雑な道路で目的地を選べるタクシーと、決められた区間を走る地域交通では、対応する環境も用途も違う。同じレベル4という言葉だけで、実用上の能力まで同じだと考えることはできない。
日本での普及を考える際には、制度があるかに加え、どこを走れ、何人が使い、どれだけの費用と人員で続けられるかを見る必要がある。この点は第4回で掘り下げる。
「地域限定」は、地図上の線だけではない
自動運転でよく出てくるのが、ODDという言葉だ。Operational Design Domainの略で、日本語では運行設計領域と呼ばれる。道路の種類、速度、天候など、システムが作動する前提条件をまとめたものだ。ASAMのOpenODD説明
例えば「一定の地域内で、特定の道路を、対応できる天候や速度の範囲で走る」と考えると分かりやすい。
ここから先は、ぼくの考察になる。問うべきなのは、制限があること自体よりも、その制限を広げるために何が必要かだと思う。
次の町へ展開するたびに大がかりな作業が必要なのか。学習した能力を別の町にも使えるのか。対応できる天候を増やせるのか。そして、利用者が払える料金で続けられるのか。
ある町で成功した事実は、その町での可能性を示している。その成功をほかの場所へ持ち出せるかどうかが、次の問いになる。
無人運転でも、サービス全体から人間が消えるわけではない
もう一つ、運転席が空であることと、事業に人手がかからないことも区別したい。
Waymoは、車両が判断のために追加情報を必要とする場面で、遠隔の担当者が支援する仕組みを説明している。同社の説明では、担当者が車を遠隔運転するのではなく、運転システムが操作を担う。Waymoの遠隔支援の説明
このような支援に加え、清掃、整備、乗客対応なども考えれば、運転者を不要にした後も、運行事業としての仕事は残る。
したがって、無人運転の価値を測るには、「人間が関わるか、関わらないか」だけでは足りない。一人が何台を支えられるのか、どれくらいの頻度で対応が必要なのかが、費用や展開のしやすさに関わってくる。
ぼくが期待しているのは、この先の広がりだ
今回確認した範囲でも、乗客だけで移動できるサービスは現実に存在する。同時に、地域や利用条件、人間の支援が残っている。進歩を認めることと、条件を確認することは両立する。
ぼくは、条件があるという理由だけで将来を悲観する気にはならない。いまは大きな負担になっている作業も、技術の進歩で小さくなるかもしれないからだ。ただし、「なるかもしれない」と「すでに見通しが立っている」の間は埋めなくてはいけない。
この連載で考えたいのは、AIが人間のように初めての道路や状況に対応できるようになるのか、ということだ。その能力が育つなら、限定された無人運転から、ずっと広い範囲を任せられる未来へ進む道が見えてくる。
一方で、普段の移動が楽になるために、必ずしもレベル5の完成まで待つ必要はないはずだ。身近な移動を担うレベル4の普及と、さらに汎用的な運転能力への挑戦。その両方に注目したい。
次回は、Waymo・Tesla・Wayveを軸に中国勢も加え、センサー、地図、AIの学習方法、運行の仕組みの違いを見ていく。同じ「自動運転」に見えても、何を手がかりに道路を理解し、どう別の環境へ広げようとしているのかは、改めて比較する価値がある。