.shop・.app・.techは使って大丈夫?新しいドメインのSEO・料金・注意点

- 1 .comが取れなかったら、すぐに新gTLDなのでしょうか
- 2 最大のメリットは「欲しい名前を取りやすい」ことです
- 3 ドメイン全体で一つの意味を作れます
- 4 SEOでは不利なのでしょうか
- 5 では、佃煮屋がcamera.shopを使ったらSEOで不利なのでしょうか
- 6 むしろ問題になるのは「人間がどう感じるか」です
- 7 .comへ間違ってアクセスされる可能性もあります
- 8 初年度料金だけを見てはいけません
- 9 プレミアムドメインという価格体系もあります
- 10 新しいTLDを正しく認識できないシステムもあります
- 11 .appのようにTLD自体に特徴がある場合もあります
- 12 新gTLDの方が覚えやすい場合もあります
- 13 .comが空いていたら、どちらを選ぶべきでしょうか
- 14 ドメインは機械より人間に向けて選ぶものなのかもしれません
.comが取れなかったら、すぐに新gTLDなのでしょうか
前回は、.comが世界的に広く使われるようになった歴史と、その後に.shop、.app、.xyzなど大量の新gTLDが登場した背景を見てきました。
今回は、もう少し現実的な立場から考えてみます。
例えば、新しい会社やサービスを始めて「example」という名前のWebサイトを作ろうとしたとします。しかしexample.comは既に誰かが登録しています。では、すぐにexample.shopやexample.techを探すのでしょうか。実際には、その前にいくつかの選択肢があります。
日本を中心に活動するのであればexample.jpが考えられます。日本で登記された会社ならexample.co.jpも候補になります。.netがブランドに合う場合もありますし、団体やプロジェクトなら.orgを選ぶこともできます。
| 候補 | 考え方 |
|---|---|
| .com | 世界的な認知度が高く、用途を限定しない |
| .jp | 日本との関係が明確。日本国内に住所があれば登録可能 |
| .co.jp | 日本で登記された会社などが対象。原則1組織1ドメイン |
| .net | 現在は用途を限定せず利用でき、比較的よく知られている |
| .org | 現在は登録資格の制限はないが、団体・非営利活動のイメージが強い |
もちろん、この順番に機械的に選べばよいという意味ではありません。
例えば日本国内だけで営業する会社なら、空いている.comよりco.jpを積極的に選ぶ考え方もあります。逆に、最初から海外展開するサービスなら、.jpより.comを優先したい場合もあるでしょう。
重要なのは、.comを唯一の正解として考えないことです。
そのうえで、主要なTLDでは希望する名前が取れない、あるいは新しいTLDを使った方が名前として明らかに自然である。そこで初めて、
- example.shop
- example.online
- example.tech
- example.store
といった選択肢が本格的に意味を持ってきます。
つまり新gTLDは、必ずしも「.comが売り切れた人の最後の手段」ではありません。ただ、既に広く知られている.com、.jp、co.jp、.netなどと比較したうえで選んだ方が、そのメリットとデメリットは見えやすくなります。
最大のメリットは「欲しい名前を取りやすい」ことです
新gTLDの最も分かりやすいメリットは、希望する文字列を取得できる可能性が高くなることです。
.comで欲しい名前が取れない場合、単語を追加したり、ハイフンを挟んだりして、例えば「best-example-shop.com」のような名前にすることがあります。
しかし「example.shop」が空いているのであれば、こちらの方が短く、見た目もすっきりしています。しかもshopという言葉が右側にあるため、「店なのだろう」という意味まで自然に伝わります。これは、新gTLDを単に「.comが取れなかったときの代用品」と考えるだけでは見えてこないメリットです。
ドメイン全体で一つの意味を作れます
従来のドメインでは、意味の中心はほぼ左側にありました。例えばexample.comなら「example」が会社名やブランド名で、「.com」はWebサイトの末尾として半ば決まり文句のように受け取られます。
ところが新gTLDでは、右側も意味を持たせることができます。
- flower.shop
- travel.blog
- design.studio
- company.tech
- game.app
このように、左側と右側を組み合わせてドメイン全体で一つの意味を作れるわけです。
場合によっては、長く複雑な.comより、新gTLDを使った方が短く、覚えやすく、何をしているサイトなのかまで分かりやすくなります。
SEOでは不利なのでしょうか
新しいTLDの話になると、よく出てくるのがSEOです。
「.comの方がGoogleで上位に表示されるのではないか」、あるいは逆に「camera.shopならcameraやshopというキーワードが入っているからSEOで有利なのではないか」と考える人もいるでしょう。
しかしGoogleは、一般的なgTLDについて、.com、.org、新gTLDなどTLDの違いそのものを通常の検索順位で有利・不利に扱うわけではないと説明しています。また、ドメイン名にキーワードが含まれていること自体にも、大きなランキング上の優位性を期待すべきではありません。つまり、example.comだから自動的にSEOで強くなるわけでも、example.shopだから弱くなるわけでもありません。また、camera.shopだから「camera shop」という検索で自動的に有利になる、というほど単純でもありません。
補足:ccTLDは少し事情が違います
.jpや.deなど国や地域に対応するccTLDは、その国・地域との関係を示す強いシグナルになります。そのため日本向けサイトで.jpを使うことには、一般的なgTLDとは別の意味があります。
一方、.comや.shop、.appなどのgTLDは、基本的には特定の国を示すものではありません。
では、佃煮屋がcamera.shopを使ったらSEOで不利なのでしょうか
ここで、少し極端な例を考えてみます。
佃煮を販売している店が、何らかの事情で「camera.shop」というドメインを使っていたとします。名前だけを見ると、どう考えてもカメラ店に見えます。
ではGoogleは、「camera.shopなのに佃煮を売っている。これはおかしい」と判断して、検索順位を下げるのでしょうか。少なくともGoogleが公開している現在の説明を見る限り、TLDやドメイン名と事業内容が一致していないという理由だけで検索順位を下げる、という単純な仕組みではありません。camera.shopというドメインで佃煮について十分な内容のサイトを作ったからといって、「camera」という文字が含まれているため佃煮の検索で自動的に不利になる、という話ではないわけです。
逆も同じです。camera.shopを取得してカメラ店を作れば、「camera」という言葉がドメインに入っているので検索順位が大きく上がる、というわけでもありません。
ではcamera.shopで佃煮を売っても、何の問題もないのでしょうか。
検索エンジンだけを見れば、大きな問題ではないかもしれません。しかし人間にとってはかなり不自然です。検索結果に、
「老舗○○佃煮店|camera.shop」
と表示されていたら、少し戸惑う人は多いでしょう。
本当に佃煮店なのか。クリックして大丈夫なのか。以前はカメラサイトだったのか。別の会社なのではないか。検索順位そのものとは別に、クリック率、覚えやすさ、口コミでの伝えやすさ、ブランドへの信頼感などには影響する可能性があります。つまりここでも、「検索エンジンが理解できるか」と「人間にとって自然か」は別問題なのです。新gTLDでは右側にも意味を持たせられることがメリットですが、その裏返しとして、意味のあるTLDを選んだ以上、その意味と実際のサービスが大きくずれると違和感も強くなります。
.comならtsukudani.comという名前でも不思議ではありません。.com自体の意味が現在かなり薄くなっているからです。
しかしtsukudani.cameraやcamera.shopとなれば、右側の単語まで人間が意味として読んでしまいます。
新gTLDの「意味を持たせられる」という長所は、場合によっては「意味に縛られる」という短所にもなるわけです。
むしろ問題になるのは「人間がどう感じるか」です
検索エンジンが新gTLDを不利に扱わないのであれば、好きなものを選べばよい。そう考えたくなります。ただ、ドメインを見るのはGoogleだけではありません。人間が見ます。
例えば「example.com」と書かれていれば、多くの人は一瞬でWebサイトのアドレスだと理解します。
では「example.photography」ならどうでしょう。
Webに慣れている人なら問題ありません。しかし、そうでない人は一瞬「これはWebサイトのアドレスなのだろうか」と考えるかもしれません。名刺やWeb広告なら周囲の文脈があるのでまだ分かりやすいでしょう。少し難しくなるのは、口頭で伝える場合です。「弊社のサイトは、exampleドットphotographyです」と言われたとき、初めて聞いた相手が一度で理解し、正確に入力できるでしょうか。ここではSEOとは全く別の問題が起きています。
技術的には正しいドメインでも、人間にとって分かりやすいとは限らないのです。
.comへ間違ってアクセスされる可能性もあります
長年の習慣も考えておく必要があります。
企業名やサービス名を聞くと、無意識に「名前+.com」を想像する人もいます。自社がexample.shopを使っていても、誰かがexample.comへアクセスする可能性はあります。そのexample.comが全く関係のないサイトであれば、アクセスを一件失う程度で済むかもしれません。しかし競合するサービスが使っていたり、よく似たサイトが存在したり、さらに悪意のある第三者が利用していたりすれば、ブランド上の問題にもなります。そのため企業によっては、主要なTLDを防衛的に取得することがあります。ただし現在はTLD自体が非常に多いため、すべてを取得することなど現実的ではありません。どこまで確保するかは、ブランドの重要性、事業規模、予算などを考えて判断することになります。
初年度料金だけを見てはいけません
ドメインを検索すると、「初年度99円」「1年目無料」のような価格を見ることがあります。確かに魅力的です。ただ、Webサイトを長く運営するなら、ドメインも毎年更新していくことになります。そこで重要になるのが更新料金です。登録事業者によっては、新規登録時だけ大幅に値引きし、2年目以降は通常料金になることがあります。また、TLDによっても価格帯にはかなり差があります。
例えば初年度は数百円だったとしても、その後毎年数千円かかるのであれば、10年使ったときの総額は全く違ってきます。会社やブランドのドメインは、数年ではなく10年、20年と使う可能性があります。そう考えると、ドメインは「いくらで買えるか」より「いくらで維持できるか」を見た方がよいのです。
プレミアムドメインという価格体系もあります
さらに、新gTLDでは同じTLDでも文字列によって価格が異なる場合があります。短い単語や人気の高い言葉などが「プレミアムドメイン」として扱われ、通常より高い料金が設定されているケースです。そして少し厄介なのは、取得時だけ高額なのか、更新時にも高い料金が続くのかが、TLDやレジストラによって異なることです。「欲しかった名前が空いている」と喜んだら、実はプレミアム価格だった、ということもあり得ます。そのため登録前には、少なくとも次の点を確認しておいた方が安全です。
- 初年度価格
- 通常の登録価格
- 更新価格
- 移管時の価格
- プレミアムドメイン扱いかどうか
新しいTLDを正しく認識できないシステムもあります
これは少し技術的な話ですが、実際の利用では意外に重要です。
Webサービスなどでは、入力されたURLやメールアドレスが正しい形式かどうかをプログラムで確認しています。ところが古いシステムの中には、「TLDは.comや.jpのように短いものだ」という古い前提で作られているものがあります。その場合、example.photographyのような長いTLDや、新しく追加されたTLDを入力すると、本当は正式なドメインなのに「無効なアドレスです」と拒否されることがあります。このように、新しいTLDや国際化ドメイン名などを、あらゆるアプリケーションやシステムが正しく扱えるようにしようという考え方をUniversal Acceptance、略してUAと呼びます。
ICANNが現在もUniversal Acceptanceへの対応を進めていることからも分かるように、この互換性問題は完全に過去のものになったわけではありません。
補足:新gTLDだからメールが届きにくい、とは限りません
新しいTLDを使っただけで、メールの配送性能が自動的に悪くなるわけではありません。メールの到達率には、送信元IPやドメインの評価、SPF、DKIM、DMARCなど様々な要素が関係します。
一方で、古い入力フォームやシステムが新しいTLDをメールアドレスとして正しく認識しないという互換性問題は起こり得ます。この二つは分けて考えた方がよいでしょう。
.appのようにTLD自体に特徴がある場合もあります
新gTLDは、すべて同じ条件で運用されているわけでもありません。
例えばGoogle Registryが運営する.appは、HSTS Preload Listの対象になっています。そのため一般的なブラウザーではHTTPSによる安全な接続が前提になります。現在のWebサイトでHTTPSを利用することはほぼ当たり前になっているため、大きな問題になるケースは少ないでしょう。むしろセキュリティ上の特徴と考えることもできます。
ただ、この例から分かるように、TLDによって登録条件や技術的なポリシーが異なる場合があります。
名前の響きだけで選ぶのではなく、自分が使おうとしているTLDに特別な条件がないか、一度確認しておく方がよいでしょう。
新gTLDの方が覚えやすい場合もあります
ここまで注意点を並べると、「それなら結局.comを使うのが一番安全なのではないか」と思えてきます。
ただ、それも一概には言えません。
例えば、
tokyo-flower-online-shop.com
と、
tokyoflower.shop
なら、後者の方が短く、意味も分かりやすいと感じる人は多いでしょう。
つまり、「.comであること」そのものより、ドメイン全体として覚えやすいか、入力しやすいか、ブランドとして自然かという方が重要になる場合があります。特に新しいサービス、アプリ、イベント、クリエイティブ系のプロジェクトなどでは、新gTLDそのものをブランドの一部として利用する考え方もできます。
.comが空いていたら、どちらを選ぶべきでしょうか
ここで少し難しい問題になります。
例えばexample.comとexample.shopが、どちらも空いていたとします。
では、どちらを選ぶべきでしょう。
これは用途によります。
会社そのものの長期的な公式サイトで、幅広い利用者を対象にするのであれば、.comの圧倒的な認知度は今でも大きなメリットです。一方、ネットショップや特定の商品ブランドなら、.shopという分かりやすさを優先する考え方もあります。また、日本国内を中心に事業を行うのであれば.jpやco.jpを選ぶ方が自然なこともありますし、団体なら.orgが名称や活動内容に合う場合もあります。つまりこれは「どのTLDの技術性能が高いか」という問題ではありません。誰に、どのような場面で、その名前を伝えるのかという問題です。
ドメインは機械より人間に向けて選ぶものなのかもしれません
ここまで見てくると、一つ面白いことに気づきます。
技術的には、.comも.jpも.shopも.appも、それぞれルールの違いはあるものの、DNSという仕組みの中で使われるドメインです。Googleも通常、gTLDの違いだけを理由に検索順位を決めているわけではありません。
それなのに、私たちはドメイン選びで悩みます。なぜでしょう。
結局、ドメインはコンピューターだけが読む名前ではないからです。
人が見て、覚え、口頭で伝え、メールアドレスとして入力し、名刺や広告にも載せます。そして何年も使われていくうちに、その文字列自体が会社やサービスのブランドになっていきます。ですから、.comが取れなかったからといって困る必要はありません。
.jp、co.jp、.net、.orgという既に定着した選択肢もありますし、その先には.shop、.app、.techなど大量の新gTLDがあります。
ただし、「空いていたから」という理由だけで決めるのも少し危険です。取得価格、更新料金、認知度、覚えやすさ、口頭での伝えやすさ、ブランドとの相性。そして5年後、10年後もその名前を使いたいと思えるか。TLDの右側まで含めて、一つの「名前」として考える方がよいのでしょう。
そして新gTLDの話をしていると、もう一つ不思議な種類のドメインが見えてきます。
.io、.tv、.me、.ai。
一見すると.shopや.appと同じような新gTLDに見えます。しかし、実はこれらは国や地域に割り当てられたccTLDです。では、なぜ世界中の企業やサービスが、本来の国や地域とは関係なく使っているのでしょうか。
第6回では、「国別ドメインなのに国別に見えないドメイン」の世界へ進みます。