ドメイン丸わかり

新gTLDとは?.shop・.app・.xyzなど新しいドメインが増えた理由

アメリカにも国別ドメインはあります

前回は、日本の.jpの中に、CO.JP、AC.JP、GO.JPなど、それぞれ登録資格を持つドメインがあることを見てきました。日本で.jpを見ると、日本のサイトだとすぐ分かります。そこで素朴な疑問が出てきます。では、アメリカのサイトはどうなのでしょう。日本が.jpなら、アメリカも当然、国を表すドメインがあるはずです。実際にあります。

アメリカ合衆国のccTLDは「.us」です。

ところが、アメリカ企業のWebサイトを思い浮かべると、.usより圧倒的に.comが目につきます。非営利団体なら.orgもよく見かけますし、.netも昔から普通に使われています。そのため、何となく.comや.orgを「アメリカのドメイン」のように感じてしまいます。

しかし制度上は違います。.com、.org、.netはいずれも国別ドメインではなく、gTLD、つまりgeneric Top-Level Domainです。

.comや.orgはアメリカのドメインではありません

ドメイン名の制度として見れば、.usと.comは全く別の種類です。

.usはアメリカという国に対応するccTLDです。一方、.com、.org、.netは国を表さないgTLDです。

では、なぜアメリカでは.usより.comの方が普通になったのでしょうか。これはドメインの制度だけを見ても、少し分かりにくい話です。

インターネットの歴史を見る必要があります。

.com、.org、.netは1980年代から存在しています

現在ではTLDは膨大にありますが、最初からそうだったわけではありません。1980年代にDNSが作られた時期、初期のgTLDとして.com、.edu、.gov、.mil、.net、.orgなどが導入されました。名前を見ると、その発想はかなり分かりやすいものです。

TLD 当初意識された用途
.com commercial(商用)
.org organization(組織)
.net network(ネットワーク)
.edu education(教育)
.gov government(政府)
.mil military(軍事)

つまり、国ごとに分けるだけではなく、「何をする組織なのか」によってインターネット上の名前を整理しようという発想も初期から存在していました。そして、そのインターネット自体がアメリカで大きく発展しました。その結果、アメリカ国内ではわざわざ.usを使わなくても、企業なら.com、組織なら.orgなどの名前を使うことが自然になっていきました。つまり、.comがアメリカのドメインだからアメリカ企業が使ったのではありません。アメリカ中心で発展した初期インターネットでgTLDが先に広く使われ、その文化が後に世界へ拡大した、と考えた方が分かりやすいでしょう。

.comはやがて「商用」以上の意味を持つようになります

当初のcomはcommercialを意識した名前でした。しかしWebが一般に広がり、企業が次々にWebサイトを作るようになると、.comは単なる分類記号ではなくなります。「Webサイトなら.com」という感覚が生まれていきます。そしてこれはアメリカだけの話ではありません。日本企業でも.comを使いますし、ヨーロッパ企業でもアジア企業でも使います。.comは国を表していないからこそ、むしろ世界中で使いやすかったとも言えます。

ここが.jpとは少し違います。.jpには「日本」という意味があります。しかし.comには国籍がありません。そのため世界展開を考える企業にとっては、最初から国に縛られない名前として使えます。

.orgや.netも同じように世界へ広がりました

.orgも事情は似ています。現在の.orgはIANA上でもgeneric top-level domainです。国別ドメインではありません。ただし、歴史的に非営利団体や公益的な組織に広く使われてきたため、「.orgを見るとNPOや団体っぽく感じる」という文化があります。

.netも同じです。名前はnetworkに由来しますが、現在はネットワーク事業者だけに限定されたドメインではありません。つまり、初期のgTLDには用途を表す発想がありましたが、長く使われるうちに、制度上の用途と人間が感じるイメージは少しずつ変化しました。

ここは前回のCO.JPと比較すると面白いところです。CO.JPは登録資格を制度として維持することで「日本企業」という意味を強く保っています。一方、.comや.orgはより自由な方向へ広がり、世界中の人が使うようになりました。

自由を制限して意味を守る仕組みと、自由に開放することで普及する仕組み。ドメインには両方があります。

しかし.comが成功すると、別の問題が起きます

さて、.comが世界中で使われるようになること自体は、成功と言ってよいでしょう。ただ、成功すると別の問題が出てきます。

名前が取れなくなります。

ドメインは同じ文字列を二人が同時に使うことはできません。例えば「coffee.com」を誰かが登録していれば、別の人は同じcoffee.comを取得できません。すると、欲しい名前が既に使われているので、文字を足したり、ハイフンを入れたり、長い名前にしたりする必要が出てきます。人気のあるTLDほど、この問題は大きくなります。

ではどうするのでしょうか。

一つの答えは、名前の左側を工夫することです。しかしもう一つ、もっと根本的な方法があります。右側を増やしてしまえばいいのです。

TLDそのものを増やすという発想

そこで、トップレベルドメイン自体を増やす動きが始まります。ICANNは2000年、新しいgTLDの最初の追加ラウンドを実施し、.biz、.info、.museum、.name、.proなどを追加しました。さらに2003年のラウンドでは、.asia、.travel、.jobs、.mobiなどが加わります。それでも、まだTLDの世界は現在ほど多くありませんでした。

大きく変わったのが2012年です。

2012年、TLDの世界が一気に広がりました

ICANNは2012年、New gTLD Programを大規模に実施しました。このラウンドでは、なんと1,930件の申請が寄せられました。申請されたのは単なる業種名だけではありません。地域を表すもの、ブランド名、一般語、コミュニティ名、さらにラテン文字以外の文字体系を使った国際化ドメインなど、非常に多様でした。その後、1,200を超える新gTLDがDNSへ導入されています。

例えば、

  • .shop
  • .app
  • .blog
  • .xyz
  • .online
  • .tech
  • .cloud
  • .store
  • .bank
  • .eco

などです。

昔のWeb利用者からすると、URLの最後にこうした単語がそのまま付いているのは、少し奇妙に感じるかもしれません。しかしDNSの仕組みから見れば、.comも.shopもトップレベルドメインであることに違いはありません。

新gTLDは何のために増やされたのでしょうか

ICANNはNew gTLD Programについて、DNSの選択肢を拡大し、競争、多様性、革新を促すことを目的の一つとして説明しています。つまり「.comが満杯だから仕方なく増やした」というだけではありません。

例えば、

camera.shop

という名前なら、「カメラを扱う店」という意味をURLそのものに持たせることができます。developer.appならアプリ関連、company.techなら技術企業、hotel.tokyoのように地域や用途を組み合わせる考え方もできます。左側と右側をセットで考えられるようになったわけです。ドメイン名の表現力が増えた、と言ってもよいでしょう。

ブランドそのものをTLDにすることもできます

さらに新gTLDには、一般の人が登録するためではなく、企業自身が管理する「ブランドTLD」もあります。例えば企業名そのものをTLDにする形です。

ICANNの2026年ラウンドの案内でも、過去の例として.m​​icrosoftや.skyなどのブランドTLD、.africaや.berlinなどの地域TLD、.bankや.ecoなどの一般・業種系TLDが紹介されています。

ここまで来ると、「ドメインの最後は.comか.jpを選ぶもの」という昔の感覚とは全く違います。TLD自体がブランド資産になっているのです。

では、見たことのないドメインは怪しいのでしょうか

ここで一般ユーザーとしては、かなり現実的な疑問が出てきます。検索結果やメールに、見たことのない「.○○」が出てきたら信用してよいのでしょうか。結論から言えば、TLDが珍しいという理由だけで怪しいとは言えません。.shopも.appも、正式にDNSへ委任されたgTLDであれば、技術的には正規のトップレベルドメインです。

ただし、これは「そのサイトが安全」という意味ではありません。.comにも詐欺サイトはありますし、新gTLDにも正規企業のサイトがあります。つまりTLDそのものの正当性と、そのドメインを使っている人の信頼性は別問題です。

この辺りは、GO.JPなど登録資格を強く制限したドメインとは事情が異なります。

新しいTLDにはメリットもあります

新gTLDの最も分かりやすいメリットは、欲しい名前を取得できる可能性が高くなることです。.comでは既に取られている短い名前でも、.shopや.techなら空いているかもしれません。

さらに、URLだけで用途を説明できることもあります。例えば、

flower.shop

travel.blog

design.studio

のような名前は、非常に直感的です。ハイフンや余計な文字を足して長い.comにするより、むしろ覚えやすい場合もあります。

ただし「正式なドメイン」と「使いやすいドメイン」は別です

では新gTLDを積極的に使えばよいのでしょうか。ここで話は少し複雑になります。技術的には正規のTLDでも、人間がどう感じるかは別だからです。

.comを見れば、多くの人はすぐにWebサイトのアドレスだと認識します。しかし、例えば「example.photography」と口頭で伝えたとき、相手がそれをURLだとすぐ理解するとは限りません。

メールアドレスでも同じです。名刺に書けば分かりますが、電話口で伝えると「最後が何ですか?」と聞かれるかもしれません。つまり、新gTLDには名前を取りやすいという利点がある一方で、認知度という問題があります。技術と人間の習慣は、必ずしも同じ速度で変化しません。

新gTLDの世界は、今も拡張されています

そして、この話は2012年で終わっていません。

ICANNは2026年、10年以上ぶりとなる新しいgTLD申請ラウンドを実施しました。つまりTLDの世界は、既に完成したものではありません。

.com、.org、.netしかなかった時代から、現在の1000を超える新gTLDの世界へ進み、さらにその先へ拡張しようとしています。

インターネットの住所体系というと、何となく昔に完成した固定的な仕組みのように感じます。しかし実際には、その最上位にある「名前の種類」そのものが今も増えています。

.comの価値がなくなったわけではありません

では、新しいTLDがこれだけ増えたのだから、.comはもう古いのでしょうか。恐らく、そう単純ではありません。.comには圧倒的な知名度があります。長く使われてきた結果、「Webサイトのアドレスらしい」という認識そのものが資産になっています。

一方、新gTLDには空いている名前が多いことや、用途を名前で表現できることなど、.comにはない利点があります。つまり、古いから悪い、新しいから良いという話ではありません。むしろ選択肢が増えたことで、今度は「どれを選ぶべきか」という別の問題が生まれました。

そして、そこが次回のテーマです。

.comが取れないとき、.shopや.appを使ってよいのでしょうか。

SEOへの影響はあるのでしょうか。信頼感はどうでしょう。更新料金は同じなのでしょうか。

新しいTLDが正式なドメインであることと、それを自分のサイトに使うべきかどうかは、また別の話です。

第5回では、新gTLDのメリットとデメリットを、実際に選ぶ側から考えてみます。

2026年9月16日 2:45 AM   投稿者: M.A.   カテゴリー: ドメイン

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