AI企業の社員と一般の人は、なぜ未来を違って見るのか―Anthropic調査

同じAIを見ていても、未来の予想は違う

AIに文章の下書きを頼む人もいれば、プログラムの作成や日々の業務を任せる人もいます。使っている技術が近くても、何を経験しているかは同じではありません。そこから思い描く数年後の働き方にも、違いが生まれるのかもしれません。

AI企業の社員と一般の人は、なぜ未来を違って見るのか

Anthropicは2026年10月16日、米国の成人と同社社員のAIへの予想を比較した調査を公開しました。中心となる8月調査には、米国成人10,980人と社員1,334人が回答しています。一般成人の回答には人口構成に合わせた重み付けを行い、社員の回答には行っていません。

将来の科学研究や、自分の仕事への予想に差

代表的な結果が、科学研究と仕事についての回答です。次の数字は、将来についてそう予想した人の割合や、回答の平均であり、AIの実際の能力を測定した結果ではありません。

質問・指標 米国の回答者 Anthropic社員
2030年までにAIがノーベル賞級の発見をできると予想した割合 39% 91%
2030年にAIができるようになると予想する、自分の現在の仕事時間の割合(平均) 28%(就業者) 75%

後者は、「社員の75%が失業する」という意味ではありません。現在の仕事のうち、どれだけをAIができるようになると思うかという質問です。また、この比較は一社の社員を対象にしており、AI業界の全員が同じ見通しを持っているとは言えません。

現場の経験には価値がある。ただし、職場も違う

この差をどう読めばよいのでしょうか。技術の開発や利用に深く関わる人には、外からは見えにくい変化が見えている可能性があります。以前は任せられなかった仕事ができるようになった経験を重ねれば、将来の進歩も速く予想するのは不自然ではありません。

一方、経験している仕事や環境の違いにも目を向ける必要があります。ソフトウェアを中心とする企業での成功を、そのまま接客、現場作業、地域の小規模事業に広げられるとは限りません。AIを使いやすい仕事をしていることと、AIについて詳しいことは重なり得ますが、同じ条件ではありません。

立場によって期待が強まる可能性も、慎重に考えるべき点です。ただし、この調査だけで、社員が期待に引っ張られているとも、一般の人が変化を過小評価しているとも判定できません。予想の違いが見つかったことと、その原因が証明されたことは別です。

別の調査でも見える、専門家と一般の人の違い

Pew Research Centerが2025年に公表した調査でも、AI専門家は一般の人より、AIへの期待や一部の将来評価で前向きでした。一方、専門家の間にも意見の違いがありました。詳しい人を一つの集団として扱うだけでは、見方の幅を捉えきれません。

ただし、こちらは対象者も質問も調査時期も異なります。Anthropicの調査と数字を直接つなげて、期待の差が広がった、あるいは縮まったと判断することはできません。似た問題が別の調査でも扱われている、という背景として読むのが適切です。

「できる」「導入する」「人が不要になる」を分ける

未来の仕事を考える際には、少なくとも三つの段階があります。AIが技術的に作業できること、会社が実際に導入すること、そして雇用や役割が変わることです。最初の段階が進んでも、残りが同じ速さで進むとは限りません。

例えば、書類の下書きを短時間で作れても、確認、顧客との調整、例外への対応、最終的な責任は残るかもしれません。浮いた時間で受注を増やす会社もあれば、人員を減らす会社もあるでしょう。自動化できる作業量から、失業者数をそのまま計算することはできません。

自分の仕事なら、何を確かめられるか

私たちがこの調査を使うなら、誰の未来予測を信じるかだけでなく、自分の仕事をどこまで確かめられるかを考える方が実用的だと思います。作業を小さく分け、AIに任せた時間と、人が確認・修正した時間を合わせて測る。うまくいく条件と、失敗する条件を記録する。そうすれば、漠然とした期待や不安を具体的な判断に近づけられます。

今回の調査は、未来の答えを示すものではありません。同じ技術でも、人によって見えている変化が違うことを示す材料です。自分とは違う立場の予想を知りながら、手元の仕事でも試してみる。その両方が、AIとの付き合い方を考える助けになりそうです。

2026年10月19日 12:54 AM   投稿者: M.A.   カテゴリー: AI, Anthropic

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